山あいの集落を「ハッピーな地域」に
漆の明日を語る会(ウルアス)
つなささ特報・2026年9月20日掲載
漆の明日を語る会(ウルアス)代表の佐藤絵梨さん。うしろは漆地区の郷土芸能「バラ踊り」(2024年9月29日)
子どもたちが「未来にわくわくする」
「私たち大人が本気で遊んで楽しむ姿を、子どもたちに見せたいんです。それで子どもたちが『大人って楽しそう』とか、『早く大人になりたい』と思えば、それは未来にわくわくする気持ちを抱くってことでしょう。さらに、おじいちゃん、おばあちゃんたちに交ざってもらって一緒に遊べば、子どもたちは『おじいちゃん、おばあちゃんってすごい、かっこいい』って、きっとそう思います。そうなればオッケー、狙いどおりですよ」
こう話すのは鹿児島県姶良市(あいらし)の漆(うるし)地区で活動する「漆の明日(あす)を語る会」、通称・ウルアスの代表、佐藤絵梨さん(48)です。
「何もないけど、何でもある」
漆地区は姶良市の中心市街地から車で40分ほどの山あいの集落。人口は戦前のピーク時には2千人を超えていましたが、その後は減少傾向が続き、現在は約130世帯200人ほどが暮らしています。高齢化率は約56%で、市全体の約32%を24ポイント上回っています。コンビニは車で15分ほどかかる別の地区まで行かないとありません。公共交通は、市が民間事業者に委託するコミュニティ・バスが週2回(1日当たり4便)だけ運行します。
「便利なものって、何もないんですよね」と佐藤さん。「それでも漆には山もある、川もある、田んぼも畑もある、虫がいて鳥がいて、夜にはたくさんの星が見える。何にもないけど、何でもあるんですよ」と言って笑います。
漆地区は山あいの農村集落。平地に農地が広がり、周囲の山裾に家々が点在する(2025年10月11日撮影)
漆のあちこちに見られる田の神さぁ(たのかんさぁ)。この神像は享保3年(1718年)に住民が寄進したとされる(同日撮影)
漆小学校に通う子どもと親たちで
「何でもある」漆の環境を生かし、マルシェやキャンプなどの体験型交流イベントを企画運営する有志のグループがウルアス。メンバーは、漆小学校に通う子どもと親たちです。PTAのような会員制組織ではなく、佐藤さんをはじめ4家族15人がコアメンバーとして活動の主な担い手になり、イベントごとにほかの家族も自由に加わることができる緩やかな枠組みです。
漆小学校は、学区外の児童が転入学できる市の「小規模校入学特別認可制度」(やまびこ留学生制度)の指定校。児童数は2026年6月時点で30人。このうち漆に暮らす子どもは7人で、残り23人が学区外から「やまびこ留学生」としてスクールバスで通っています。ウルアスのコアメンバーにも学区外在住の家族がいます。その家族の父親が漆の出身で「子どもに豊かな自然や生活文化を体験させたい」と同制度を利用しています。
ウルアス主催の交流イベントの様子(佐藤絵梨さん制作のプレゼン資料より抜粋)
高齢者のわざを学ぶワークショップ
ウルアスの主な活動場所は、漆小学校です。企画開催するイベントは、たとえば、気温が氷点下になる真冬の校庭での星空観察会を兼ねた「極寒キャンプ」、集落に生息するホタルの観察会を兼ねた初夏の「ホタルキャンプ」、校庭と体育館に工芸品・雑貨・飲食料品などの販売ブースやキッチンカーが並ぶ「ウルアス・マルシェ」など。
マルシェには、漆小の児童が販売ブースを構える「子どもマルシェ」のコーナーも。店主となる子どもは、何をいくらで売るか、売り上げ金をどう管理し使うか、自分で決めて店を運営します。また、漆の高齢者が講師役となって、わら細工のキーホルダーや竹の水鉄砲をつくるワークショップなども開かれます。水鉄砲づくりは子どもたちに大人気。わら細工は元々は子ども向けに企画されたものでしたが、むしろ大人に好評を博しています。
マルシェが開かれると、会場には市内外から漆の人口の倍以上に当たる500人あまりが訪れます。開催の告知にはインスタグラムや市の公式LINEなどのSNS(会員制交流サイト)を活用しています。
わら細工づくりのワークショップ(佐藤絵梨さん制作のプレゼン資料より抜粋)
ワークショップでつくった竹の水鉄砲で遊ぶ(同)
名人達人がいっぱいいる
佐藤さんが目指すのは「私たち(ウルアスのメンバーと地元住民)が漆を遊び尽くしながら、よその人たちにも漆の良さを知ってもらう」と同時に、「子どもだけ、お年寄りだけ、現役世代だけじゃない、みんなが交わって楽しく活躍できるハッピーな地域をつくること」です。そのための活動基盤がウルアス。
ウルアスの活動開始は2023年2月。当初は、漆小の子どもとその親たちを中心に、若い世代による、若い世代向けのイベントが企画されていました。ところが、やがて上記のワークショップのような「高齢者の活躍の場」も設けられるようになりました。その経緯を佐藤さんは次のように説明します。
「漆のおじいちゃん、おばあちゃんって本当にすごいんです。農村地域なので、当然米づくりや野菜づくりが得意な人が多いんですけど、それだけじゃなくて、剣道や習字の達人もいる、狩猟や山菜採り、竹細工やわら細工、漬けものや郷土料理の名人もいる、地区の歴史や文化の生き字引のような人もいます。大雨で路肩が崩れたり、厳冬期に水道管が破裂したりすると、重機を運転して自力で復旧させてしまう人もいます。暮らしに役立つ知恵とわざの名人達人が、いっぱいいるんです。そういうおじいちゃん、おばあちゃんたちが活躍できる場が、少ないことに気がつきました。『だったらウルアスの活動で知恵やわざを披露してもらえばいいじゃない』と思ったんです」
本記事冒頭の佐藤さんのコメントにある「おじいちゃん、おばあちゃんってすごいな、かっこいいな」は、子どもたちが高齢者の知恵やわざに触れることが前提です。その前提をウルアスが整えるわけです。
高齢者は貴重な知恵、卓越したわざを持っている(佐藤絵梨さんのプレゼン資料より抜粋)
問題は「高齢化」そのものではない
山あいの豊かな自然環境、その環境と調和して暮らすために編み出された知恵やわざ、それらを受け継ぎ、支え合って生きる人びとのすごさ、かっこよさ。それが漆の魅力です。マルシェなどのイベントで、ものづくりのワークショップの講師として地元の高齢者を招くのは、単に「高齢者の活躍の場をつくる」だけのことではありません。子どもや若者、ほかの地域の人たちが漆の生活文化に触れ、高齢者の卓越した知恵とわざを知り、漆の魅力に気づくことでもあります。また、世代や地域を越えた親しいつながりも、イベントを通じて育まれます。これに関連して佐藤さんはこう指摘します。
「漆をはじめ全国各地で高齢化が問題になっています。でも本当の問題は、高齢化そのものというより、高齢者の活躍の場が少ないことなんだと思います」
ふるさとの魅力が伝わっていない?
地区の高齢化率が高いということは、高齢になっても多少不便でもそこに「住み続けたい」と願う人が多い証しでもあります。それだけ魅力的な地区であり、愛着を持っているということでしょう。高齢者はその地区に最も魅力、愛着を感じている人たちであると同時に、その魅力の体現者でもあります。若い世代が生まれ育ったふるさとを離れてしまうのは、進学・就職の都合や生活の利便性を考慮した結果かもしれませんが、実はもう一つの背景として、高齢者の生き方、暮らし方から見えてくる地区の魅力が、うまく伝わっていないこともあるのではないでしょうか。
ウルアスは、その活動を通じて漆の魅力を多くの人に知ってもらおうとしています。それは結果的に交流・関係人口の増加による地区の活性化をはじめ、高齢者の活躍機会の創出による介護予防や孤立防止、さらには子どもや若者に「わくわくする未来」を思い描かせるといった、さまざまな効果をもたらします。
過疎や高齢化の解決策として「移住定住の促進」を掲げるより、まず地区の自然や生活文化を体験する、遊び尽くす。それも「子どもだけ」「若い世代だけ」でなく、すべての世代が一緒になって楽しさを共有し、地区の魅力を再認識する。そうした段階を経て結果的に、あるいは副次的に「何にもないけど、何でもある」と言える好ましい地域の姿が発見されるのかもしれません。高齢者の活躍の場づくりが、過疎や高齢化の問題を直接解決するものではないとしても、少なくとも持続可能な地域へと至る道をほのかに照らす一つの光になりそうです。
世代を問わず集い、交わり、親しいつながりをつくることが重要(佐藤絵梨さんのプレゼン資料より抜粋)
高齢者は「スーパーマン」
子どもが高齢者と親しく交流し、生活の知恵やわざに触れることにどんな意義や効果があるのか、わかりやすく教えてくれる貴重な資料があります。佐藤さんの息子・梛ノ介(なぎのすけ)さんが小学5年生のときに書いた作文です(以下に全文を掲載)。
〈令和6(2024)年度 第15回姶良市福祉作文コンクール最優秀賞〉
「ぼくの友達は高れい者」 漆小学校5年 佐藤梛ノ介
ぼくは、小学1年生の時にこの漆に引っこしてきました。元もとは、福岡に住んでいて、お母さんが、
「農業をしたい」
と言ったので、漆に来ました。漆は、山に囲まれていて、緑がたくさんある場所です。周りには、川・田がほとんどです。住人が少なくて、しかもその半分以上は高れい者です。
小学校の全校児童が30名で、その中のたった7名しか漆の子どもはいません。周りには、子どもがすくなくて、ぼくの友達の中には、近くのおじいちゃん、おばあちゃんもいます。そのおじいちゃん、おばあちゃん達との交流が多いので、色いろと学んでいます。
そんなおじいちゃん達の中でも、すごくてスーパーマンみたいな人達を二人紹かいします。
一人目は、九十代なのに、雨の日も気温が高い日も毎日はか参りに行くおばあちゃんです、しかも、こしが九十度に曲がって手押し車なのに、かた道五百メートルも行き帰りしていてすごいなと思いました。いつもニコニコしていて、とっても元気でやさしいです。とてもエネルギーがあって、パワーもあり、すごいおばあちゃんだと思います。
二人目は、七十代の何でも作れるおじいちゃんです。ヤギ、ニワトリ、マス、ヒヨコなど色いろな生き物をかっています。そのおじいちゃんはバイクの運転もできて、ちゅう車場や生き物のための小屋も作れます。しかも、コミュニティー会長で、学校の草かりもしてくれています。テレビで、マスをかっているおじいさんを見て
「おれもかいたい」
と言い、たった一人で六平方メートルぐらいの池を作りました。とっても力持ちで、やりたいことをすぐ実行するやさしいおじいちゃんだなと思います。
漆に住むようになり、たくさんの高れい者に会いました。福岡にいたころは、高れい者と聞くと、ほとんど家の中ですごし、ゆっくりとお茶やおしゃべりをしている人達かなと想像していました。だけど、予想と全然ちがっていて、漆のおじいちゃん、おばあちゃん達は、元気いっぱいで行動力のある人達でした。
とっても元気なおじいちゃん、おばあちゃんたちがいる地いきがこれからもずっと続けばいいな思います。
これで、ぼくの友達の紹介を終わります。すてきな友達だったでしょう。
令和6年度姶良市福祉作文コンクール(主催:姶良市社会福祉協議会)の作文集。佐藤梛ノ介さんの「ぼくの友達は高れい者」を掲載
「生きる力」を養う社会教育の場
佐藤さんはこの作文を引き合いに出しながら、世代間交流と地域のあり方に関して次のように述べています。
「おじいちゃん、おばあちゃんたちは、いたわる対象というだけでなく、友だちになれる人たち、尊敬すべきスーパーマンでもある、そういうことを自然な形で子どもに伝えられるのが理想的な地域だと思うんです」
ちなみに作文中で「コミュニティー会長」と紹介されているのは、漆地区の自治組織「漆校区コミュニティ協議会」の当時の会長で現在は副会長を務める松永政裕さん(78)です(ウルアスに関する松永さんのコメントを後述)。
漆の子どもは、両親や祖父母、学校の先生以外の大人、特に高齢者と、安心して親しく触れ合う機会に恵まれています。祖父母と同居していなくても、普段の生活のなかで地元の高齢者と出会い「スーパーマンみたいな」「元気いっぱいで行動力のある」姿に接します。そうすることで、年を重ねることがわくわくする未来として思い描けるようになり、山あいの集落は「これからもずっと続けばいいな」と思える場所になります。こうした経験と認識は、自らの人生を切り開いていく力、生きる力になってくれるのではないでしょうか。その意味で、漆の生活環境や生活文化は優れた社会教育の場と言えます。
いつか子どもたちが漆を離れても、漆とのつながりを切らず、いわゆる関係人口になってくれるかもしれません。あるいは再び戻ってきて、佐藤さんのように何らかの活動を起こす人も現れるかもしれません。それがまた、漆に暮らす人たち、関わる人たちの人生を豊かに彩っていく、そんな好循環が期待できます。
「漆を遊び尽くす」ことを目的とするウルアスの活動が、結果的に地域福祉や社会教育、地域おこしの大きな効果を生んでいます。みんなで一緒に楽しいことをする、役割を持って参加・活躍できる場をつくる、それが子どもから高齢者まで誰もが暮らしやすい地域づくりを推進する鍵になりそうです。
郷土芸能の伝承活動が「お手本」
ウルアス以前にも、漆にはすでに同様の効果を持つさまざまな住民活動が行われてきています。そのなかで特に佐藤さんが注目し「活動のお手本」とするのが、約400年の歴史を持つとされる漆の郷土芸能「バラ踊り」の伝承です。
バラ踊りは、豊臣秀吉の朝鮮出兵の凱旋祝いで踊られたのが起源とされます。その名称は、大型の竹ザル(「竹バラ」と呼ばれます)に和紙を貼った「バラ太鼓」を打ち鳴らしながら踊るところから来ています。戦中戦後の混乱期に伝承が一時途絶えたものの、住民有志が1977年に「漆バラ踊り保存会」を発足させて復活。現在、保存会は漆校区コミュニティ協議会の構成組織の一つとなり、協議会が保存会の事務局を担っています。
踊りは毎年9月下旬の日曜に開かれる、漆地区の合同秋季大運動会で披露されます。漆小の児童全員と保護者、教職員らが踊り手を務めます。ちなみに同運動会は、子どもから高齢者までが参加し住民総出で盛り上げる漆の一大行事で、約150年の歴史を誇ります。
漆のバラ踊り。合同秋季大運動会で披露(2024年9月29日)
上:バラ踊りの準備。子どもたちの着つけを親が手伝う。下:住民総出の合同秋季大運動会。高齢者が出場するゲームの様子(2024年9月29日)
地域づくりのハッピー・トライアングル
バラ踊りがなぜウルアスの「お手本」なのか。佐藤さんの説明がわかりやすいので、コメントをそのまま掲載します。
「バラ踊りは元々は大人が踊っていたんですが、30年ぐらい前から小学生も一緒に踊るようになりました。子どもたちは夏休み期間中から体育館や校庭で練習に励み、秋の大運動会で踊りを披露するのが恒例です。バラ踊りの伝承は、子どもを中心に小学校・保護者・地域が三位一体となって取り組むんです。小学校は授業でもバラ踊りの学習の時間を設けるほか、練習の時間と場所の確保、道具の保管などで協力し、保護者は練習のサポートや道具の修繕、本番の運営を担い、地域(漆バラ踊り保存会、漆校区コミュニティ協議会など)は指導者の派遣や資金面の手当て、夜間練習の子どもの送迎などを行います」
「こうした郷土芸能や伝統行事は、担い手の確保が難しくなって全国的に存続の危機に直面していますよね。漆も同じで、実際に一時伝承が途絶えたことがあります。バラ踊りの伝承もたいへんな人手と労力を要するのですが、それでも現在まで伝承できているのは、子どもを中心とした小学校・保護者・地域の三位一体の協力体制があるからです。これは、子どもと現役世代と高齢者が一緒に取り組む活動でもあり、多世代交流と世代間のつながりづくりにも役立っています。この三位一体は、まさに暮らしやすい地域づくりのハッピー・トライアングルです。ウルアスにとってもこのトライアングルはお手本ですし、活動の持続可能性を高める鍵になると思っています」
「私もPTAのバラ踊り担当を務めたことがあるんですが、練習に付き添っていると、子どもたち一人ひとりの性格や特徴がよくわかります。子どもたちと親たちのコミュニケーションもすごく密になって、連帯感、信頼感が強まります。だから、子どもが悪さをすれば、よその子でもわが子同様に遠慮なく叱れるようになります(笑)」
「バラ踊りには、全体の統括役としての『親ガネ』、踊り手のリーダー役となる『バラ頭(がしら)』という2つの役職があって、どちらも小学6年生の子どもが務めます。みんなこの2つの役職に憧れるんです。バラ頭や親ガネはやっぱりかっこいいんですよ。梛ノ介も6年生のときに『親ガネ』を務めました。そのことにとても責任感を持って、『バラ踊りを後輩たちにしっかり伝えたい』なんて言ってました。頼もしいなと思いました」
「漆小は特認校(小規模校入学特別認可制度の指定校)なので、学区外の子どもたちと地元の子どもたちが一緒に勉強したり、バラ踊りなどの伝統文化に触れることができます。ウルアスのイベントではさらに広い範囲から子どもたちが集まって、いろんな人と親しく交流できます。子どもたちは自分の世界を広げることができるんです」
バラ踊り伝承の「ハッピー・トライアングル」。地域づくりのお手本(佐藤絵梨さんのプレゼン資料より抜粋)
子どもの頃は「ただただ楽しい場所」
前出の梛ノ介さんの作文でも少し触れられていますが、実は佐藤さん親子は、福岡県福岡市から姶良市漆地区への移住者です。
佐藤さんは1978年、鹿児島市に生まれました。20代から30代にかけては同市をはじめ東京都、福岡市など都市部で広告営業や人材派遣のアドバイザー、大型商業施設での店舗開発・運営などの仕事に従事。2010年に結婚し、以降は福岡市に住んでいました。
漆には母方の祖父母が暮らしていました。佐藤さんは子どもの頃ひんぱんに漆を訪れていたそうです。
「私は小学生の頃はほぼ毎週末、漆に遊びに来ていたんです。その当時の私にとって漆は、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんがいる、ただただ楽しい場所でした」
その祖父母が高齢となり、後継者のいない田畑が耕作放棄地になる恐れが出てきました。佐藤さんは祖父母の農地を守り継ごうと一念発起。2018年、当時4歳だった梛ノ介さんを連れて鹿児島市に帰郷し、県立農業大学校(鹿児島県日置市)に2年間通って新規就農者向けのカリキュラムを修めました。2020年、祖父母宅の近くに家を借り、梛ノ介さんの小学校入学のタイミングで漆へ移住。家計の安定を図るため、夫はそれまでの仕事を続けられるよう福岡市の自宅に残る、いわゆる「逆単身赴任」の生活スタイルを選びました。
移り住んで漆の魅力に改めて気づく
佐藤さんは、受け継いだ祖父母の農地で「ほかぞん農園」を立ち上げ、米・野菜類の直売に乗り出します(現在ほかぞん農園は水稲栽培に注力)。日々の農作業やご近所付き合い、PTA、自治会、コミュニティ協議会などの活動を通じて「何にもないけど、何でもある」漆の魅力をはっきりと感じ取るようになります。
「大人になって都会で働いて、いろんな経験を積んで、それから漆に移り住んでみたら、その魅力に改めて気づかされました」
住民同士が近所付き合いのなかで、さりげなく子どもや高齢者を見守り、困りごとがあればすぐに気づいて手を差し伸べる、野菜や漬けものなどのおすそ分けもしょっちゅうしたりされたりする、そのつながりの豊かさ。風土と調和した生活の知恵や卓越したわざを持ち、生き生きと暮らす高齢者。その様子に感銘を受けたと言います。
「漆のお年寄りたちはすごく元気。もう毎日動き回っています。畑のこと、家のこと、集落の行事などを、どんどんこなします。そんな姿に私は感動し、深い尊敬の念を抱きました」
漆では野菜や漬けもの、手料理などのおすそ分けはしょっちゅう(知り合いから野菜を受け取る佐藤絵梨さん)
「もっと知りたい、知ってほしい」
幼い頃に楽しく遊んだ思い出と、都市部での生活経験という二つのフィルターをとおすと、不便な過疎の山間集落という表層的なイメージの向こう側にある本当の漆の姿、すなわち人と風土、歴史、文化が綾なす地区の奥行きのある様相が、高い解像度で浮かび上がってきました。
「なんて素敵な人たちなんだろう、なんていいところなんだろうと感動しました。そういう漆のよさをもっと知りたい、楽しみたい、そしてよその人たちにも知ってほしいという気持ちが、どんどん強くなりました」
移住して3年目の2022年、PTAの仲間に声を掛け、計4家族でウルアスを結成。翌23年2月、スタートアップのプレ・イベントとしてコアメンバー4家族で「極寒キャンプ」を実施。同年5月には、広く参加者を募って「ホタルキャンプ」を開催し本格始動しました。
移住者の力を「うまく生かす」
ウルアスの活動では、バラ踊りと同様、小学校・保護者・地域のトライアングルによる協力体制が組まれています。
トライアングルの一角「地域」を代表する組織として漆校区コミュニティ協議会があります。その副会長、松永政裕さんは、佐藤さんとウルアスの活動に関して次のように述べています。
「この地区の住民は、Uターンした人とか、移住者を、うまく生かすっていう姿勢があります。地元の人とは違った発想とかアイデアとか、それまでとは少し違った風を吹かせてくれると期待するんでしょうね。実際に、佐藤さんが移住してウルアスというグループをつくって活躍されています。コミュニティ協議会の青年育成部長も務めてくれています。本当にね、佐藤さんはそれまで見たことのないような、子どもや親たちを巻き込んだいろんな活動を生み出していますよ。そういう外からの風に、特に若い世代は共感するんじゃないでしょうか。ずっとここに住んでいる人は、案外地元の良さを意識せず、生かせずにいると思います。佐藤さんのような人が、その良さをうまく生かして、漆の魅力を引き出して、多くの人にわからせてくれています」
若い世代の「やりたい」を応援
漆校区コミュニティ協議会の支援員(市の会計年度任用職員)として事務局業務を担当する外園清視(きよみ)さん(70)は、こう話しています。
「佐藤さんが漆に移住してまもなくコロナ禍になって、地区のすべての行事が中止に追い込まれました。なかなか再開できない状況でしたが、佐藤さんたち若い世代が『やりたい』と言い出して、再開にこぎ着けた経緯があります。若い世代が『やりたい』という気持ちを出すと、私たち上の世代も『応援したい』となるんです。停滞した状況を打ち破るのは、よそもの・わかもの・ばかものと、よく言うでしょう、本当にそうだと思います。特に佐藤さんは、いつも前向きで、人との接し方も上手。彼女と話していると、自然に元気になるんですよ。佐藤さんから『これをしたいんだけど』と言われると、もう何でもやってあげたくなります。巻き込み上手な人。こういう人が活躍できるよう、まわりが応援することで、地区に活気が出てくると思うんです」
松永政裕さん(漆校区コミュニティ協議会副会長[前会長])
外園清視さん(漆校区コミュニティ協議会支援員)
日常のコミュニケーション
松永さんと外園さんのコメントからもわかるように、移住者である佐藤さんは地元住民から厚い信頼を得ています。ウルアスの活動基盤となる小学校・保護者・地域のトライアングルも、信頼があってはじめて機能するものでしょう。
信頼関係を育むコツを佐藤さんに聞くと、次のような答えが返ってきました。
「私が普段から意識してることが一つあって、それは、困りごとや相談したいことがあるときだけ周囲に声を掛けるのではなく、日常的にコミュニケーションを大事にするということです。何かことが起きたときに、いきなりお願いするっていうのは、すごくハードルが高いんです。でも、普段から話をしていると、そのハードルが下がって、地区のおじいちゃん、おばあちゃんも、学校の先生方も、PTAの保護者たちも、こちらの話に耳を傾け、快く受け入れてくれるんです」
バラ踊りの伝承もウルアスの活動も、住民同士の親しく信頼あるつながりのうえに成り立っています。
活動の本質は「楽しむこと」
ウルアスの活動やバラ踊りで活躍した佐藤さんの息子、梛ノ介さんは2026年3月、漆小学校を卒業。中学校への進学に合わせて父親と福岡市で暮らすようになり、今度は佐藤さんが「単身赴任」状態となりました。
ウルアスは漆小学校に通う子どもとその親たちの活動の枠組みです。子どもが卒業したあとのあり方について、佐藤さんは次のような考えを示しています。
「いまのメンバーの子どもたちがみんな小学校を卒業しても、ウルアスの枠組みと活動は続いていくと思います。ただ、活動内容は少しずつ変化していく可能性があります。これまでは子ども向けを強く意識したイベントを開催してきましたが、大人向けの活動メニューが増えるかもしれませんね。とにかく、漆を好きになってほしい、漆が好きな人を増やしたい、それに尽きます。移住者を増やすということまでは、考えていません。移住定住の促進より、まずは漆で楽しみを共有できる機会をつくりたい。ウルアスでは楽しいと思えることをやってきたし、これからもそうです。ウルアスの活動の本質は『楽しむこと』ですから」
楽しい時間を一緒に過ごし、親しいつながりを育む。地域の自然とそこに住む人びとが織りなす生活環境や生活文化の魅力に気づき、自らの人生に「わくわくする未来」を描いていく。そのための話し合いと実践の枠組みが、漆の明日を語る会、ウルアスです。
ウルアスの活動を広くアピール
第8回 姶良市地域包括ケア学習会
姶良市地域包括ケア学習会で佐藤絵梨さんがウルアスの活動を発表(2024年9月30日、姶良公民館大ホール)
地域包括ケア学習会で作文「ぼくの友達は高れい齢」を朗読する佐藤梛ノ介さん
来場者に驚きと感動
姶良市社会福祉協議会は、高齢でも安心して暮らせる地域づくりをテーマに「地域包括ケア学習会」を毎年度、数百人規模のホールで開催しています。主な内容は、地域づくりを進めるうえで鍵となる住民活動についての講演や報告、ディスカッションなど。毎回多くの市民や介護・福祉分野の専門職らが参加しています。
2024年9月30日に姶良公民館大ホールで開かれた第8回学習会では、ウルアス代表の佐藤絵梨さんが地域づくり実践者として招かれ、ウルアスの活動を発表しました。息子の梛ノ介さんも一緒に登壇し、作文「ぼくの友達は高れい者」を朗読。また、当時漆校区コミュニティ協議会の会長を務めていた松永政裕さんもウルアスの活動への評価や、梛ノ介さんとの親しい交流についてコメントしています。
ウルアスの活動発表は大きな反響を呼びました。特に、佐藤さんが「問題は高齢化そのものではなく、高齢者の活躍の場が少ないこと」と指摘したことや、梛ノ介さんが作文で漆の高齢者を「スーパーマンみたい」と憧れを込めて表現したことは、来場者に驚きと感動をもって受け止められています(ウルアスの活動や作文の内容については、上に掲載した記事を参照)。
〈インタビュー〉
生活支援コーディネーター
中野武さん 迫間朋子さん
(姶良市社会福祉協議会)
迫間朋子さんと中野武さん(2025年10月9日、漆地区で)
生活支援体制整備事業とウルアス
地域包括ケア学習会(上記参照)は、姶良市の生活支援体制整備事業の一環として開かれています。その企画や運営で中心的な役割を担うのは、市社会福祉協議会の生活支援コーディネーター、中野武(たける)さんと迫間朋子さんです。学習会でウルアスを取り上げた経緯や狙いを2人に聞きました。
ウルアスを知ったきっかけ
迫間さん「漆地区の史跡巡りやキツネの嫁入り行列などが行われる『デグ寺紀行』というイベントがあります。2024年6月1日に開催されたそのイベントを見に行ったら、ウルアス・マルシェが併催されていました。マルシェでウルアス代表の佐藤絵梨さんと知り合ったんです。私がこのイベントを知ったのは、インスタでの告知がきっかけでした。生活支援コーディネーターとして市内の交流イベントなどには普段からアンテナを張っていて、興味を引くものがあれば、休日でもプライベートで個人の立場で見に行くようにしています」
地域包括ケア学習会に招いた理由
迫間さん「マルシェで出会ったとき、佐藤さんはウルアスについて『漆を愛する人たちが集まって、漆の明日を考えるために始めた。小学生の子どもがいる4家族が集まってスタートさせた。若い世代だけでなく、子どもから高齢者まで多世代がつながって漆を盛り上げていきたい』と説明してくれました。ウルアスのメンバーは子どもと子育て世代ですが、佐藤さんは高齢者を巻き込んで活動していました。ウルアスの活動とその背景にある佐藤さんの考えは、地域づくりの実践事例として広く知ってもらう価値があると直観しました。マルシェで出会って2週間ほど経ってから、(同じく生活支援コーディネーターの)中野と2人で、改めて佐藤さん宅を訪ね、ウルアスの活動についてヒアリングをしました。その時点で、地域包括ケア学習会に出てもらうことをある程度想定していました」
ウルアスの活動のポイント
中野さん「若い世代だけでなく高齢者をうまく巻き込んでいること、高齢者の活躍の場づくりに取り組んでいることです。佐藤さんは、その背景にある思いをこう話してくれました。『漆では1年で10人ぐらいの高齢者が亡くなっている。人口が減っているとか、高齢化が進んでいるということも問題だけど、暮らしに役立つさまざまな知恵や技術を持っている高齢者が、その知恵や技術を下の世代に伝えないまま亡くなっていくことに危機感を覚えた』と。そのうえで佐藤さんは高齢者の活躍の場、知恵や技術を生かせる場、場合によってはそれで少しお金を稼いだりもできるような場をつくりたいと言いました。たとえば、高齢女性の一人にわら細工が得意な人がいる、その匠のわざを生かして、ちょっと小遣い稼ぎができたり、わざを下の世代に伝えたりして、生きがいや健康づくりにもなる場をつくりたいと」
多世代参加型の住民活動を重視
中野さん「ウルアスのイベントは基本的に子どもに楽しんでもらうものなんですが、地域の高齢者を講師に招いてワークショップも開いています。たとえば竹で水鉄砲をつくったり、わら細工にチャレンジするワークショップです。イベントを通じて高齢者の社会参加を促し、多世代のつながりを育むような仕掛けが必ず用意されているんです。従来、私たち生活支援コーディネーターが推進する地域づくりというと、高齢者だけを対象にした生活支援ボランティアの活動とか、介護予防サロンといったものが主流になりがちでした。しかし、サロンなどの仕組みで高齢者だけを囲い込むより、多世代の活動のなかで高齢者も活躍する、それが結果的に孤立防止や介護予防につながるという構図のほうが、高齢者にとっても子どもや若者にとっても、好ましいのではないかと考えました」
迫間さん「高齢者を対象とする活動ではないのに、なぜウルアスを地域包括ケア学習会で取り上げるのだろうと、疑問を抱く人もいるでしょう。確かに、ウルアスの活動は子どもに軸を置いたものですが、それが高齢でも暮らしやすい地域づくりに大きな役割を果たしています。疑問の声に対しては、そういう意義をきちんと説明し、理解を得るようにしています。私たち生活支援コーディネーターが目指す地域づくりの理想的なあり方が、ウルアスの実践に含まれていると思います。なので、佐藤さんには、学習会ではウルアスを立ち上げた狙いや活動内容を(高齢者の活躍の場づくりに限らず)ありのままに発表してほしいと依頼しました」
学習会に佐藤梛ノ介さんや松永政裕さんも
迫間さん「梛ノ介くんが、市社協主催の福祉作文コンクールに応募していて、その内容が実にすばらしかった。高齢者と子どもの日常の交流が、子どもにとって貴重な経験だということをわかりやすく示していました。なので、地域包括ケア学習会には梛ノ介くんも招きました。漆の自治組織である漆校区コミュニティ協議会の会長をされていた松永さんを招いたのは、協議会がウルアスの活動を理解し協力を惜しまない姿勢を示していて、こうした地域の連携が重要であることを知ってもらう狙いもありました」
ウルアスに対する来場者の反応
中野さん「地域包括ケア学習会の来場者アンケートの結果によると、佐藤さんが『漆の本当の問題は高齢化そのものではなく、高齢者の活躍の場が少ないことだ』と指摘した点が、来場者にはとても強く印象に残ったようです。これまで多世代参加型の地域づくりというと、地域の住民活動に若い世代をいかに呼び込むかというところに焦点が当たりがちでしたが、地域の魅力を発信するためには高齢者の活躍の場をつくることも大事だという佐藤さんの指摘で、来場者の視野が大きく広がったようです。高齢者を支援の対象としてだけ見るのではなく、地域づくりの担い手になってもらうことが必要だし、その姿を子どもや若者に見せることも大事な学びになると思います」
中野さんもプライベートで参加
中野さん「はい。私もウルアスのイベントにプライベートで参加しています。たとえば2024年6月、当時4歳と1歳の子どもを連れて、家族4人でウルアスのホタルキャンプに参加しました。ウルアスのメンバーでなくても、漆や姶良市に住んでいない人でも参加できるんです。鹿児島市など、市外からの参加も結構ありますよ。キャンプ翌日はマルシェが開かれました。参加した子どもたちは、初めて会う子ども同士でもすぐ仲良くなって一緒に遊びます。ほかの子の親たちや運営に関わる地域の人たちとも、子どもたちは安心して楽しく交流する様子が見られます。本当にいい活動だなと個人的にも実感しています。ウルアスのイベントは、アウトドア系のアクティビティやマルシェが好きな大人も楽しめますから、若い世代を地域の活動に巻き込むということでもたくさんのヒントがあると思います」
〈補足解説〉
「高齢者だけ」「子どもだけ」にしない
ウルアスの活動から学ぶこと
生活支援体制整備事業の一環で開催されるフォーラムや、交流・研修・学習会などでは、地域の住民や民間企業・団体などが取り組む高齢者のための介護予防サロンをはじめ、見守り・安否確認の活動、通院・買いもの・草刈り・清掃・片付け作業などの生活支援サービスといったものを取り上げるのが一般的です。
姶良市でも、高齢者向けのサロンや各種生活支援サービスの普及啓発と情報発信が、生活支援コーディネーターらによって行われています。サロンやサービスの情報は「インフォーマルサービス一覧」として市社協ウェブサイトに掲載され、住民や介護・福祉の専門職らに活用されています。
一方で、住民が主体的・自発的に地域づくりに取り組む場合、そしてこれを生活支援コーディネーターがあと押しする場合は、「対象を高齢者に限定しなければならない」といった制約を設ける必要があるでしょうか。地域の暮らしを行政機構に合わせてわざわざ縦割りにするのは、ナンセンスではないでしょうか。
もちろん、サロンや各種生活支援のボランティア活動などを立ち上げて運営するうえで、そうした制約を設定したほうが効率的であったり、補助金などを活用しやすかったりする事情もあります。一概に「高齢者だけ」「子どもだけ」といった制約を否定するものではありません。ただ「高齢者だけ」「子どもだけ」にとらわれたり、「福祉」「介護」「生活支援」にこだわったりすると、ウルアスのような枠組みとその活動が持っている意義や価値が見えにくくなってしまう恐れがあります。郷土芸能や伝統行事などについても、同じことが言えます。
親しい住民はみんな「民生委員」
子どもと子育て世代が中心となってイベントを開く。そこに高齢者の活躍の場もある。高齢者が活躍する姿に子どもや若者が刺激を受ける。楽しい時間を共有することで立場や世代を越えたつながりが育まれる、普段から気軽に声を掛けられるようになる、さりげなく見守ったり手助けしたりといった優しい気遣いができるようになる――などなど。地域のイベントには実に多面的な効能があります。
高齢者の見守りや手助けといった地域福祉の活動は、それを目的とする事業や組織、人員でしかできないわけでは決してありません。地域の祭りや交流イベントを通じて育まれる住民同士のつながりを基盤に、必要に応じて普通の住民である「私」や「あなた」が、親しい誰かにとっての「民生委員」「ボランティア」「ヘルパー」のように振る舞うことは容易にできます。実際にさまざまな場面でそうした様子を目にします。
たとえば、エアコンが動かない、テレビが点かないといったときに、親しい隣近所に「困った、どうしよう、エアコンが動かない」と話すと、すぐに誰かがリモコンの電池交換を手伝ってくれたりします。そんなちょっとしたことの積み重ねが「住み慣れた地域で、家で、自分らしく安心して暮らし続ける」ための大きな力になっています。場合によっては介護・福祉のサービスより、はるかに細やかに高齢者を見守る目となり、支える手となっています。組織も仕組みも補助金も不要の、暮らしに根付いた、住民主体の、これも立派な地域福祉活動ではありませんか。
夢や理想を語り合える「場と仲間」
漆地区でも体調を崩したり困りごとを抱えた高齢者がいれば、周囲の人たちがすぐに気づいて手を差し伸べる、そんな住民同士のつながりが古くから受け継がれています。伝統のバラ踊りや運動会に加えて、ウルアスの活動などは、「つながりと支え合いの生活文化」を守り継ぐうえで重要な役割を担い、地域福祉の向上に大きく貢献しているのです。
生活支援コーディネーターによる住民活動のあと押しは、サロンや生活支援サービスの立ち上げや運営といった仕組みづくりだけでなく、つながりと支え合いの生活文化を醸成していくことを目的としてもいいはずです。組織や制度、仕組みよりむしろ、楽しさに彩られた生活文化のほうがよほど長続きする可能性が高いでしょう。長い目で見て持続可能な地域、「ずっとここに住んでいたい」「住んでいてよかった」と思える地域づくりに必要なことは何か。まずはしっかりと話し合いたいものです。
ウルアスの正式名称は「漆の明日を語る会」です。語る会、すなわち「話し合いの場」(協議体)なのです。ちなみに「社会福祉協議会」もまた、話し合いの場を意味する名称になっています。
夢や希望のある人生、理想的な地域像、わくわくする未来について、気軽に話し合える場と仲間を持つこと。それが地域づくりの手段であると同時に目標にもなります。ともに「明日を語る」仲間がいるということは、すでにつながりと支え合いの生活文化を持っているということです。持っている人はこれを大事に守り、まだ持っていない人はどうすれば持てるかを考えてみてほしいと思います。
オンライン研修でウルアスを紹介
全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)
CLCのオンライン研修に出演・協力した皆さん(左から姶良市社会福祉協議会生活支援コーディネーター・中野武さん、迫間朋子さん、市議会議員・外園正剛さん、漆校区コミュニティ協議会副会長・松永政裕さん、ウルアス代表・佐藤絵梨さん、漆校区コミュニティ協議会支援員・外園清視さん)※オンライン会議システム「Zoom」のスクリーンショット
地域への入り方、地域資源の発見
NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター(=CLC、宮城県仙台市)が主催する「生活支援コーディネーター養成Zoomオンライン研修」にウルアス代表の佐藤絵梨さん(48)、漆校区コミュニティ協議会副会長の松永政裕さん(78)、同支援員の外園清視さん(70)、そして姶良市社会福祉協議会の生活支援コーディネーター中野武さん(34)、迫間朋子さん(57)が実践発表者として出演しました。
出演した研修は、16のプログラムのうち「地域の暮らしを知るアセスメント ~地域への入り方、地域資源の発見~」をテーマとする「基本研修3」です。2026年6月5日、オンライン会議システム「Zoom」で生配信されました。
研修当日、佐藤さんらは漆地区の古民家をリフォームした外園清視さん宅から同システムに接続。地場産材を用いた古民家特有の太い梁などが映し出される場面もあり、漆の歴史と風土を感じさせる配信となりました。パソコンとカメラの操作など、現地での配信のオペレーション全般を、外園さんの息子で市議会議員の外園正剛(せいごう)さん(28)が担当してくれました。
受講者は、北海道から沖縄まで全国各地で生活支援体制整備事業や「高齢でも暮らしやすい地域づくり」に取り組む約170人。ウルアスの活動と生活支援コーディネーターの関わり方などについて学びました。講師を務めたのはCLC理事長・池田昌弘さんと私、つなささ情報室・木村です。生活支援体制整備事業で生かすべき地域資源(=地域のお宝)などについて、ウルアスと姶良市をはじめ、ほかの市町村の事例なども引用しながら解説しました。受講者からは「子ども向けの行事でも視点を変えれば高齢者の活躍の場になっていると知った」「地域のつながりを次の世代に伝えていく重要性がわかった」といった感想が寄せられています。
〈資料提供〉
ウルアス・佐藤絵梨さん
姶良市社協・生活支援コーディネーター
佐藤さんからウルアスのプレゼン用資料を、市社協の中野さん、迫間さんからは生活支援コーディネーターの活動解説用資料を、それぞれご提供いただきました。私木村が研修で使用した資料も併せ、以下に掲載します。ぜひご参照ください。
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